2015年度奨学金授賞者のサマースクール・レポート

ニューズレターの第13号で報告しましたように、9人の東大生と11人の米国学生がFUTIグローバル・リーダーシップ賞 (FUTI-GLA)を受賞しました。FUTIの夏季奨学金(正式名称、FUTI グローバル・リーダーシップ賞)は米国と日本における将来のグローバル・リーダーの育成を目標としており、リーダーとしての資質を有することが選考基準の一つになっています。

選ばれた東大生9人のうち5人はプリンストン大学、ハーバード大学、UCバークレー校、スタンフォード大学、ミシガン大学でのサマー・コースを受講しました。残りのうちの3人は、イェール大学、コロンビア大学、UCバークレー校での英語研修コースに参加、1人は、イェール大学でのグローバル・サマー・プログラム(GSP)に参加しました。

東大生の専攻別の内訳は、FUTIプログラムに応募時点で、理工系が6人、文科系が3人、また、学年別では、学部生が5人(2年生3人、3年生1人、4年生1人)、大学院生が4人(修士課程1年生3人、同2年生1人)です。

米国大学生11人に関しては、東大理学系又は工学系の研究室でインターンとして研鑽を積んだ9人のうち5人は理学部教授がホスト役として研究指導に当たる University of Tokyo Research Internship Program (UTRIP) に参加、2人は新領域創成科学研究科の主催するUniversity of Tokyo Summer Internship Program Kashiwa (UTSIP Kashiwa)に参加、さらに、MITの学生2人は理工系の研究室でインターンとして研修しました。FUTIサマー・スカラシップの競争率は高く、たとえば、UTRIP参加予定の受賞者は米国各地の大学から応募した40余名の中から選抜されました。応募者の多くが一流大学のトップクラスの学生達でした。上記のインターン生以外の2人は、いずれもイェール大学の学生 (共に2年生)で、東大のGSPに参加しました。

さらに、東大「教養学部英語コース」(PEAK) に2015年秋から入学したカリフォルニア州および オレゴン州の高校卒業生2人にFUTIからトラベル奨学金が授与されました。

2015度受賞者の名簿はFUTIウエブサイトに掲載されています。レポート全文をご覧になるには、ここをクリックしてください。

東大生のレポートからの抜粋

アメリカで夏を経験した9人の東大生は異口同音に「授業からも、教室の外でも大変多くを学んだ。世界と日本についての視野を大きく広げることができ、将来のキャリア・プランを再考する良い機会になった」と述べています。さらに、「教室や実習 は密度が濃く、また、机を並べて学んだ多国籍の学生と親しい関係なることができた」と語っています。以下にレポートからの抜粋のいくつかを掲載します。

古川夏輝 薬学部3年:ハーバード大学サマースクール、「がん」および「バイオイメージング法」

私は今年の夏休みに7週間ハーバード大学のサマースクールに参加しました。サマースクールではがんについての授業、そしてバイオイメージング法についての授業を受けました。がん細胞は特異な細胞で、無制限に増殖を続けるなど通常の細胞ではおこらないようなさまざまな現象がおきています。これらの現象がなぜ起こるのか、そしてその結果生体にどのような影響が及ぶのかを学ぶことは非常に興味深かったです。これらの授業では実際の研究者が使うようなデータベースを用いた実習などもありました。サマースクールでの経験を通して、大学院では海外の大学院に進み、将来的には世界で活躍できる生物学者になりたいという思いが一層強くなりました。

田村治顕, 工学系研究科, 修士1年:カリフォルニア大学バークレー校、語学研修プログラム

UCバークレー留学時、私は”Business Speaking”という授業を受講しました。その授業ではビジネスにおける課題についてグループで議論を行い、解決策についてプレゼンテーションを行いました。講義に加え、バークレーでの生活で多くのことを学ぶことができました。ルームメイトであるネイティヴスピーカーの友人たちは、英会話が苦手な私に対しても全く嫌がることなく積極的に話をしてくれ、多くの知識や出来事、日々感じたことを共有することができました。この経験を通して、今後私は東京大学で留学している海外の学生達と、より積極的に交流しようと思います。この夏の経験から、背景の違う人達のものの受け止め方、価値観の理解を深めることができました。

羽場優紀, 総合文化研究科広域科学, 修士、一年:コロンビア大学、英語研修コース

コロンビア大学・アメリカンランゲージプログラムでの語学学習は、英語のみを学ぶものではありませんでした。つまり、あくまで英語を使いながら、アメリカの文化を学ぶためにデザインされたものでした。… さらに、この夏の体験として最も重要だったことのひとつは、意外にも、語学学習のクラスで出会った同じアジアの(中国・台湾・韓国からの)学生たちとの交流です。クラスが終わった後、アジア全土から集まった優秀な学生たちと毎日のように我々の国々を取り巻く様々な問題について語り合い、ときに議論は深夜まで続くこともありました。研究においてもアジアの国際連携の必要性が叫ばれる今、目を向けるべきは欧米だけではないと知りました。

コロンビアでの英語学習は “世界を牽引する科学者になる” という私の夢の第一歩に過ぎません。しかし、端から見れば小さなこの一歩も、僕にとって夢への大きな飛躍の一歩となりました。FUTIの惜しみない支援が、この人生の大きな転換点となる体験を可能にしてくれたのです。私は現在コロンビア大学大学院にて、夢への第二、第三歩を踏み進めています。

米国大学生のレポートからの抜粋

11人の米国大学生は、例外なく、有益なリサーチ技術を習得し、貴重な経験を積んだと報告しています。彼らの多くは、日本の文化、社会に好印象を持ち、また来たいとの意向を表明しています。

Hsu (Indy) Liu、リード・カレッジ、物理、3年:UTRIP(酒井広文教授研究室)

私はリベラルアーツカレッジで理論物理学を専攻していますが、東大での専門分野の最前線をいく実験への参加は、まさに目をみはる経験でした。実験物理学者であることの素晴らしさ、また難しさについて多くを身をもって学ぶことができました。酒井研究室での経験は物理学研究を続けたいという動機づけになりました。また研究室以外での経験を通して日本に住んでみたいという気持ちを強く持ちました。羽田空港から離陸する時は「グッドバイ、日本、でも必ず戻ってくるよ」という気持ちでした。

Carolyn Zhang、イェール大学、電気工学、2年:GSP(ナノサイエンス)

東大でのグローバルサマープログラム( GSP )ナノサイエンスコースは今まで私が人生で経験した最も記憶に残る経験のひとつです。それは、学問的研究に没頭するという魅力だけでなく、優れた文化に身を浸すような興奮にも満ち溢れたものでした。教室での授業、研究所訪問、モチベーションの高い学生との交流により、これまで私の中にあったナノサイエンスの生物学的研究に進むことに対する躊躇は払拭され、研究を通して科学に対する関心を追求し続けていこうという気持が高まってきました。エキサイティングな科学を勉強し、豊かな文化を体験し、幅広い様々な人々と交友に恵まれたこの夏に、私は、大変感謝しています。これらの記憶をしっかり胸に刻んで、また将来日本に帰ってきたいと願っています。

Elbegduuren Erdenee、プリンストン大学、分子生物学、2年:UTRIP(小澤岳昌教授研究室)

将来科学者を目指す私にとり、専門の科学者がどのよう環境で研究をするのかを知るという意味で小沢研究室での経験は大変貴重でした。小沢研究室に於いて私が強く感じたことは、私の周りの才気溢れる若手研究者たちが猛烈な精力と自制心を以て重要な科学的問題に取り組んでいる、ということでした。日本を去るにあたって、私は、ハードワーク、忍耐、規律という面で、日本人と張り合うのは難しいなァ、ということがよく分かったような気がしています。日本の同僚から更に学ぶために大学院の研究のために私は日本にまた来ることを切に願っています。


ニューズレター第14号の記事: