5月17日に、「パナマ文書の考察」というテーマでKrishen Mehta氏(Yale UniversityにてSenior Global Justice Fellow)による英語レクチャーが行われました。ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)が公表したパナマの法律事務所の膨大な内部文書、いわゆる「パナマ文書」が世界中で大騒動を巻き起こしている中、国際税務分野での権威であり、”Global Tax Fairness”(Oxford University Press)の共同編集者であるKrishen Mehta氏のレクチャーということで、東大卒業生を中心に36名が集まりました。
Mehta氏は、「タックス・ヘイブンとは何か」という基本的な問いから始まる7つの問いに答える形でレクチャーを進めました。タックスヘイブンは、税率がゼロまたはそれに極めて近い国や地域を指しますが、世界のタックスヘイブンに集まる資金は25兆ドルにのぼります。アメリカ合衆国のGDPが18兆ドル、日本のGDPが6兆ドルであることを考えると、圧倒的な富が集まっていることがわかります。また、世界全体でのGDP成長率が年間3%であるにもかかわらず、タックスヘイブンは年間10%の割合で成長しています。この巨大なタックスヘイブンを利用する2大国は、アメリカそしてイギリスになります。タックスヘイブンは、英米といった国々が、タックスヘイブンとなっている貧しいまたは発展途上の国や地域から富を合法的に吸い上げる構造であるということをMehta氏は指摘しました。現在はこれらの国々から、多くの資金がタックスヘイブンに流出し、貧困を強化する結果となっています。
タックスヘイブンが存在することによる日本への悪影響として挙げられるのは、 世界における国際競争力悪化です。英米各企業がタックスヘイブンを利用して税を下げる中、日本の多くの企業は遵法意識が高く30%の法人税を払っているために、それらの企業との競争力を下げる結果になっています。
Mehta氏はさらに、「銀行等、各企業が財務の流れを公開すべき」、「違法に対する通報者への寛容」等、現状についての解決案を幾つか提示しました。Mehta氏は、最後にパスカルの”Justice and power must be brought together, so that whatever is just may be powerful, and whatever is powerful may be just”という名言を紹介しました。レクチャー後には多くの質問が参加者よりMehta氏に向けてなされ、限られた時間の中で濃密な対話がMehta氏と参加者によってなされました。
執筆:後藤美波