米国伊藤財団―FUTI奨学生による「現場からの報告」

米国伊藤財団―FUTI奨学金は、米国伊藤財団からの資金提供を受けて、2016年度に始まりました。東大から米大学への1学期以上の中長期留学を主な支援の対象としています。(詳細はこちら https://www.todaitomonokai.org/米国伊藤財団-futi奨学金/)

2017-18年度は現役生と卒業生合わせて10名が選ばれ、ハーバード、プリンストン、コロンビア、UCバークレーなど米国の大学に留学しています。専攻は政治、社会・組織心理、映画製作、ランドスケープ・アーキテクチャー、航空宇宙工学 などと幅広く、学部生から修士、博士課程を履修する学生まで含まれています。

東大友の会では、ご協力いただけた奨学生の皆さんから留学生活に関する写真付きエッセーを寄せていただき、2018年5月下旬より、「現場からの報告」と題して、フェイスブックの当会ページ(www.facebook.com/friendsofutokyo)に掲載しています。

世界各地から集まった他の学生や、大学のある現地の人々との交流も深いものとなり、日常生活のさまざまな場面で刺激を受けているようです。レポートを読むと、奨学生一人一人が、日本とは異なる環境で、どのような経験をし、何を吸収しているのかがよくわかり、その留学を支援しているFUTI関係者としては読んでいて嬉しい限りです。

今年度は、担当の祖開亜希子さんがお休みを取られているので、ボランティアの田中靖子さん(経済学部2006卒、Austin在)がレポートの取りまとめの作業をしてくださいました。深くお礼を申し上げます。

フェイスブックをご利用でしたら、ぜひご覧になってみてください。「いいね」やコメント、あるいはシェアをしていただくのも大歓迎です。ここでは三人のレポートを紹介します。


後藤美波

美術史卒、2015

コロンビア大学大学院フィルムスクールに在学中

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卒業制作の撮影時、クルーや俳優たちと記念撮影

皆様こんにちは、コロンビア大学大学院フィルムスクールに在学中の後藤美波と申します。

2015年夏に渡米しニューヨーク で大学院生活を始めてから、あっという間に3年間が経とうとしています。

最終学年のこの1年間は、ゼミを通して映画業界のビジネスについて学んだり、卒業制作を通して3年間学んだことをアウトプットしたりと、フィルムスチューデントから一人のフィルムメーカーとしてキャリアを始めるための移行準備期間でした。

日本での短編映画撮影時、監督用メガホンを持って

秋にはニューヨークで短編映画をプロデュースし、アメリカ人の監督と組んで、資金集めから完成まで一緒に働きました。

そして、今年1月には、日本でも短編映画を監督させていただく機会も頂きました。

私の地元・浜松市で撮影させていただいた際には、その縁で、市長に表敬訪問までさせていただくことが出来ました。

その映画は先月完成し、6月に東京での上映が決まっております。(「ブレイカーズ」作品と上映についての記事:

http://www.shortshorts.org/2018/topics/news/ja/2836

日米の撮影の違いを知ったり、プロの方々と働くことが出来たり、沢山のことを学ばせて頂きながら、楽しく、時に苦しみながら、作りました。

浜松市長への表敬訪問時の記念撮影

東京に6月にいらっしゃる方は、もし良ければ会場に足をお運びになってご覧ください。

また、5月上旬には、課外授業として、教授の引率でフランス・カンヌ国際映画祭の見学に行って参ります。

カンヌ映画祭は、上映される映画のレベルが高いはもちろんのこと、世界中から映画人やマーケター、プレスなど、業界人の集まってくる一大イベントです。今からワクワクしています。多くのものを見て、感じて、吸収してきたいと思います。

最後になりますが、ニューヨークで勉学と制作に集中できるのは、FUTIの皆様のサポートのお陰です。本当に、ありがとうございます。私は今年の10月に大学院を卒業いたしますが、卒業後は、私が今まで東大の先輩方に助けて頂いたように、後輩たちに少しずつでもサポートしてあげられるように頑張りたいと思います。


野村実広

後期教養学部学際科学科 2017

プリンストン大学・工学部環境 工学科の 修士課程

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リチャードソン講堂での開会式

初めまして、野村実広と申します。昨年、東京大学・後期教養学部学際科学科を卒業し、同年秋より、プリンストン大学・工学部環境 工学科の 修士課程に在籍しています。

ナッソーホール(1756年に建てられたキャンパスで最も古い建物)

環境科学および工学に関する講義の中で、とりわけ”Environmental Chemistry”という講義が印象に残っています。本講義では、様々な環境問題を扱い、それらを理解するための科学的知見について学びました。最終課題では、培ってきた知識を活かし、豊洲汚染問題のモデル化と健康リスクの定量評価を行いました。身に付けた知見を、関心を持っていた豊洲汚染問題に活用できた経験は、有意義で、自信にもなりました。

友達と作った日本の鍋料理

大学内・外のイベントやセミナーにも積極的に参加してきました。思い出深いイベントでしたのは、プリンストンにある小さな教会が主催したクリスマスパーティーです。パーティーの終盤、「きよしこの夜」を、参加者の母国語(約20か国語)で順番に合唱したとき、これまでに感じたことのない、国境を越えた団結力のようなものを感じました。近年、英国のEU離脱やトランプ大統領の当選などに、反グローバリゼーションの流れを危惧させられましたが、「きよしこの夜」を合唱したその空間は、平和、希望、そして協調性に満ち溢れ、胸に熱いものが込み上げました。

プリンストン大学とハーバード大学のバスケットボール試合

来年も、勉学はもとより、人間的にも成長できますよう、より一層励んでいく所存です。最後になりますが、このような貴重な機会を下さった米国伊藤財団およびFUTIに改めて感謝申し上げます。


岡本一秀

工学系研究科航空宇宙工学専攻修士課程 2014

Georgia Institute of Technology, School of Aerospace Engineering, 博士課程

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僕のデスク。うちの研究室では自分の出身国の国旗を掲げています。(新入生が入ると教授が喜々としてどこからか新しい旗を持ってきます。)他にアメリカ、中国、インド、スウェーデン、カナダ、韓国からの学生がいます。

Georgia Institute of Technology, School of Aerospace Engineering, Ph.D. 課程の岡本一秀です。

2014年に工学系研究科航空宇宙工学専攻修士課程を修了し、同年からGeorgia Techで学んでいます。

アトランタオリンピックのプールの敷地に作られたジム。奥の白い布の向こうが競技用プールです。これは朝撮った写真ですが、夕方には学生で一杯になります。

既に留学生活も4年目が終わろうとしており、Ph.D.取得に必要な授業も取り終わっていますので、毎日ひたすら研究の日々です。専門は不確実環境下の制御で、例えば人が飛び出してくるかもしれない住宅地を走る自動運転車や風の外乱を受けるドローンをどう制御すればよいのかということを機械学習や最適制御理論を使って研究しています。カリキュラム上は5年が標準ですので、後1年で卒業の予定です。

セスナで上空から見たキャンパスとアトランタのミッドタウン。

東大もGeorgia Techもトップレベルの研究をしている点では共通していますが、広大なキャンパスの中には1996年のアトランタオリンピックで使用された選手村が学生寮として使われていたり、競技プール施設が改装されて5階建ての巨大な運動施設になっています。また、大学がフライトクラブを持っていて学生がパイロットのライセンスを取れるのも魅力的です(僕も取りました)。東大も総合図書館を改装しましたが、Georgia Techの図書館も現在改装中で、蔵書の大部分が電子書籍の「本のない図書館」になるそうです。ただしこれには一長一短あって、もし電子書籍でなく紙の本を手に入れたい場合には、注文して1日待たなければならないので紙派の学生からは不評ですが。。東大のほうが確実に遥か上だと思えるのは食事情で、学内の食堂や本郷・駒場の近くのお店の価格と味が時折とても懐かしくなります。おかげで随分自炊スキルが身につきました。

自分で焼いたアップルパイ。アメリカのおやつが口に合わないので他にも色々作れるようになりました。

最後になりますが、米国伊藤財団-FUTIの支援に感謝申し上げます。刺激的な環境に身を置けていることに感謝し、引き続き頑張って参ります。


ニューズレター第19号の記事: