小出昌平教授(Perlmutter Cancer Center at NYU Lagone Health)講演:「次世代がん治療法の開発・タンパク質デザインの役割」

11月16日にはNYU Lagone Medical Centerの小出昌平教授(86年農学部農芸化学科卒、91年農学博士)を迎え、「次世代がん治療法の開発・タンパク質デザインの役割」との題名で講演・懇親会を開催しました。講演会開催当日は前日の大雪の影響が懸念されましたが、講演内容が今年のノーベル医学賞、化学賞と直接関連のあるタイムリーなテーマであったため、幅広い分野、年代から25名を超える参加者が集まりました。

まず最初にノーベル医学賞の対象となったチェックポイント阻害剤とバイオロジクス製薬についての説明が行われ、従来型の抗がん剤による延命治療とは違う、チェックポイント阻害剤がどのように現在のがん治療を大きく変えつつあるかのお話がありました。同時に、この新しい治療方法が有効な種類のがんや患者がまだ限られていることや、コスト面等の現時点での問題点についても触れられておりました。更に、ノーベル化学賞の対象となったPhage Displayがタンパク質の新規機能を創成する上で重要な役割を果たしていることや、抗体の作り方が昔と今とでどのように変化してきたかについても説明がありました。

後半には、巨大な製薬会社が研究開発費を投入する競争の激しい本分野におけるNYU Lagone Medical Centerのユニークな取り組みや、小出教授ご本人がどのような経緯でアメリカにおいてこのような研究をされるに至ったのか等についても熱く語られておりました。

講演中、またその後のQ & A セッションでは多様な視点から質問が出され、活発な議論が展開されました。また、参加者からは後日以下のようなコメントもありました。

講演そのものは言うまでもなく刺激的だったのですが、大学院生/若手研究者としてはそれ以上に、日本から米国に渡り全くオリジナルな研究(例えばモノボディー)を切り拓いてきた小出夫妻の人生そのものが’inspiring’ なセミナーだったと感じています。30代前半で米国で独立し「どうせやるなら誰もやったことのない研究を」という信念で世界的権威まで登りつめた小出先生の姿を見て、私もどうせ米国に来たなら誰もできない研究をしたいという気持ちを新たにしました。

Antibody/monobodyに関する基礎研究から臨床応用に向けての実験まで幅広く手掛けており、とても刺激になりました。いつか私も小出先生のように治療につながる研究をしたいと思いました。また大学院生としてキャリアを考える上で、現地で研究室を運営している小出先生の体験話は大変勉強になりました。

人類の最先端の探求を強烈に感じました…ご夫婦での30年間以上の格闘が凝集された内容で、深い感銘を受けるとともに、人類の最先端のロマンを旅行者のように感じるお時間をいただけましたことにも、感謝申し上げます。抗体、モノボディーのライブラリーから、どんどん臨床応用の薬が今後出てくるのでしょう。これからが楽しみです。

若い人にユニークな研究機会を提供する米国の大学の制度や、そのような人や課題を見極めるのが困難と思われる日本の既存の制度が、アカデミアでもビジネスでも共通する日米の相違点なのかもしれない、と心に強く残りました。

文責:武神

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