黒川清氏、ジャパン·ソサエティーで講演

Kurokawa国会により指名された東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(通称、国会事故調)の委員長をつとめた現在政策研究大学院大学アカデミックフェロー、東京大学名誉教授の黒川清氏が“NAIIC Report on Fukushima: Lessons Learned and Next Steps Forward (福島に関する国会事故調の報告: 得られた教訓と次に進むべきステップ)”という題目で10月7日にニューヨーク市のジャパン·ソサエティーで講演をした。ジャパン・ソサエティー理事長桜井本篤氏の挨拶に引き続き、トンプソンロイターの通信員ダニエル・ベーシス(Daniel Bases)氏が司会を務めた。

黒川教授は国会事故調のミッション、調査過程、主たる調査結果、および勧告の概略をまず説明し、3月11日の地震と津波の直後に起こった福島第一原発での事故は「自然災害と見なすことはできない。未然に防止出来、またそうすべきであった人工災害であることは明らかである」と述べる。福島原発での事故の根本的な原因は、日本文化に根ざす慣習に見いだすことができると教授は指摘する。すなわち、日本人の反射的な従順さ、権威に対して問い質そうとしない姿勢、決まり事を熱心に守ろうとする姿勢、私たちの集団主義、そして私たちの島国的閉鎖性にある。日本の原子力業界がスリーマイル島とチェルノブイリでの事故からの教訓を学ばなかった事、さらに規制圧力に抵抗したり、小さな事故なら隠蔽する慣習などが当然なこととして許容されていたのは、このような日本人のマインドセットの結果であると説く。

Kurokawa3黒川教授は将来の核惨事の再発を回避するために委員会が勧告する幾つかのの提言を説明した。1)核エネルギーの分野での監査官を監督する常任委員会を国会内に設ける;2)東京電力の企業体質を抜本的に改革し, 安全性の問題、相互監視 、透明性に基づく電力事業者間に新しい関係を築き上げる;3) 被汚染地域のモニタリングや除染なども含め、長期的に公共衛生への影響に取り組む体制を確立する。

「福島大災害の原因となった日本人のマインドセットは日本のどこにでも存在する。この事実を認識して、我々一人一人が民主的社会における個人としての責任を自覚すべきである」と述べ講演を締めくくった。

当講演はジャパン・ソサエティー牧野容子ポリシー・シリーズの一環として行われた。国会事故調の報告書はhttp://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3856371/naiic.go.jp/index.html で見る事が出来る。

講演者のプロフィール

Kurokawa2黒川清(医学博士)は現在政策研究大学院大学アカデミックフェロー、日本医療政策機構代表、IMPACT Japan の創立者・会長。東京大学医学部卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部教授(1976-84), 東京大学医学部教授 (1989-96), 東海大学医学部学部長(1996-2002), 日本学術会議会長 (2003-06), 内閣官房内閣特別顧問(2006-08)等を歴任。更に世界保健機構(WHO)委員など国内外の学会の役員を務める。A*STAR(シンガポール)、カリファ大学(アブダビ)の理事、マレーシア首相の諮問委員、米国医学研究所の会員、米国内科医師会(ACP)の栄誉会員、ACP日本支部の初代理事(2003-2011)。日本政府の多くの委員会の役員を務める。

1999年に紫綬褒章、2011年に旭日重光章、2013年にアメリカ科学振興協会(AAAS)から「科学の自由と責任賞」(Award for Scientific Freedom and Responsibility)、東京アメリカンクラブから功績賞(Distinguished Achievement Award)を受賞している。2013年4月??日、東京大学入学式で来賓として行ったスピーチの内容は黒川教授のウェブサイトをクリックして見る事ができるhttp://www.kiyoshikurokawa.com/jp/


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