2018年9月28日(金)に、グランドセントラル駅近くのTiger Pacific Capitalにて東京大学 大学執行役・副学長(生産技術研究所 教授)藤井輝夫先生より、「海を知るためのテクノロジー」ーデジタル革命時代における持続可能な発展のためにーというタイトルでご講演いただきました。
ご講演に先立ち、東京大学がTimes Higher Education Rankingで昨年の46位から42位に上がったことについて議論されました。また、東京大学の社会連携本部において卒業生部門(同窓会関係)と渉外部門(寄付関係)が一緒になったことや、オンラインコミュニティーTFTのご紹介がありました。
先生のご講演は、深海の様子を写したビデオから始まりました。深海艇からの光で照らされたほとんどのものは同じ色で、太陽光の無い世界がとても地上と異なることが直感的に理解されました。このような色の無い深海でも多様な生物が生きており、その生物は地底から湧き出る熱水に含まれる化学物質を栄養源として利用していることが説明されました。他にも、海底には多様な鉱物資源やエネルギー資源が眠っており、人類が持続的発展をするためにもっと知ることが必要なフロンティアであることが示されました。しかし、この重要な海を探査することがいかに大変であるかを私たちは知りました。海は深く、広く、高圧で、真っ暗であり、その全てが探索を困難なものとするのです。
海の探索のための最先端技術として、Autonomous Underwater Vehicle(AUV)と呼ばれる自立型海中ロボットが開発されていることが紹介されました。この分野では日本は多数の優れたロボットを生み出しており、世界トップクラスの技術を持っています。藤井先生は学生時代には浦環先生のもとでTwin BurgerというAUVの開発に従事されていたそうです。
さらに、AUVなどに搭載されるセンサーの開発についても知ることができました。ロボットに搭載できる量が限られているため、より軽く、高感度なセンサーが求められます。藤井先生はマイクロ流体デバイス技術を応用した小型高性能のセンサーを開発し、海中へ潜ったロボットがその場で自動でpHや金属イオン、そして遺伝子や生体分子まで解析できるセンサーを開発なさったそうです。
最後に、3億6千万平方メートルもある広大な海を知るためのOMNIというセンサーネットワークの開発についてご紹介がありました。こちらのセンサーは海面にプカプカと浮いて、海の状況を知らせてくれるものです。オープンプラットフォームで、1つ200ドル以下のローコストで作成できるようデザインされています。一般の市民に参加してもらい、安価なセンサーをたくさん浮かべてこれまでよりも圧倒的に高密度なネットワークを作ることで、広すぎて把握できなかった海の様子を知ることができるようになると期待されています。
ご講演の後には、参加者から藤井先生に活発にたくさんの質問が投げかけられました。海のことだけでなく、地球温暖化のことや、東大の未来など多様な話題が議論され、大いに盛り上がりました。
文責:池内