東大友の会支援の第9回山川健次郎記念レクチャーを開催

Steven Wilkinson 教授(イェール大学政治学部長)講演後東大の院生とのオフィスアワーでの研究指導

イェール大学のSteven Wilkinson先生をお迎えしての、第9回山川健次郎記念レクチャー/SSU フォーラム(東京大学政策ビジョン政策研究センター安全保障研究ユニットとイェール大学マクラミラン国際地域研究所共催、東大友の会協賛)が5月19日(金)に京大学伊藤国際学術研究センターで開催されました。当日の会場には、東京大学の学生・教職員をはじめ、学外からも学生、研究者を含め、34名の参加者がありました。

Wilkinson先生は英国エジンバラ大学史学科を卒業後、マサチューセッツ工科大学にて政治学博士号を取得され、現在はイェール大学政治学部のNilekani インド・南アジア学講座教授であるとともに、政治学部長を務められています。インドの近代史を専門に研究され、Votes and Violence: electoral competition and ethnic riots in India(Cambridge University Press, 2006)、Army and Nation : Military and Indian Democracy since Independence(Harvard University Press, 2015)などの著書を出版されています。

東京大学大学院法学政治学研究科教授・政策ビジョン研究センター長安全保障研究ユニット長の藤原帰一先生からの開会の挨拶に続き、Wilkinson先生が “War and Political Change”というタイトルで講演されました。

この講演では「紛争参加体験は、個人として又グループとしてその後の政治変革や政治紛争への参加にどのように影響を及ぼすのか」が主題で、1)インドにおいて、第二次世界大戦の退役軍人が1947年のインド分離独立の際の民族浄化にどのような役割を果たしたのか、2)アメリカの南北戦争に参加したフランス人軍人の、初期のフランス革命への影響、の2つのケースに関する研究についてお話がありました。 Wilkinson先生は、この二つのケースの膨大な歴史的資料やデータを駆使しての実証分析により、どちらのケースも退役軍人とその後の民族抗争には関連がみられるとの結果を説明され、歴史の重要な転換点に参加した個々人が、その後の歴史の重要な展開をどのように形成・規定するのかという、比較政治理論的にも極めて斬新な発想の興味深い分析を披露されました。

講演の後、コメンテイターの千葉大学法政経学部の、石田憲先生(国際政治史)から、専門的立場からのコメントと質問を頂き、それを口火にWilkinson先生と参加者の間で極めて活発な意見交換がなされました。その後も参加者から、学術的な質問が活発に寄せられ、予定時間を超えての盛況な講演会となりました。

講演会終了後、場所を東京大学社会科学研究所・会議室で、あらかじめ面会を希望していた、東京大学、早稲田大学の大学院生6人とWilkinson先生とのオフィスアワーが2時間にわたり行われました。少人数で行われるオフィスアワーでは、若手研究者が、自分の研究やアメリカの研究事情、アメリカへの留学のアドヴァイスなど多岐な話題で先生との懇談・議論ができる貴重な機会を持つことができました。海外からの研究者を招待してのみ得られる、貴重な機会には、参加者からは大変有意義な会であったとのご意見を頂きました。

*山川健次郎博士は、1875年にイェール大学を卒業した最初の日本人。帰国後、東京大学において物理学の教鞭を執った後、東京、京都、九州の各帝国大学の総長を務め、近代日本における高等教育の発展に尽力しました。山川健次郎博士を記念し、2013年より毎年数回イェール大学から講演者を招聘し山川健次郎記念レクチャーを開催しています。

著者:Todai-Yale Initiative スタッフ


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