Visiting Medical Student Elective at Johns Hopkins University School of Medicine

By Mariko Kanegae

私はJohns Hopkins University (JHU)で3/21〜4/20の一か月間臨床実習を行う機会をいただきました。私がお世話になったのはPediatric Neurologyという小児の神経疾患を扱う診療科で、Peds-Neuroの主科入院に加えて、他科やEDからのコンサルト診療も行います。

JHU実習内容について

学生の基本的なdutyは、担当患者を1-3人決めて受け持ち、pre-roundingをして回診時に上級医に軽くプレゼンテーションすることとカルテ記載を行うことでした。Pre-roundingとは、朝の回診前に一人で担当患者の病室を回ることを指し、患者の前日からの変化についてカルテを参照したり、担当看護師などから聞き取ったりした上で、神経学的所見を取ります。チーム回診で病室に入る直前に、担当のjunior residentおよび医学生が患者の総括、前日からの変化や重要な所見、アセスメントとプランについて、大事な部分のみを簡潔にプレゼンテーションをします。担当できた症例の幅も広く、てんかん、難治性頭痛、視神経脊髄炎、重症筋無力症、急性の末梢神経麻痺などを診る経験を積むことができました。

週に3回はmorning reportが設けられており、Neurology全体の中の各チームが持ち回りで症例検討や疾患に関する講義を行います。また、週に1回Peds-Neuro内で行われるGrand Roundがあり、小児神経の症例検討や疾患に関する講義が行われました。

その他の時間については、回診にかかる時間や担当患者数にもよりますが、救急外来に来院した患者の診察や、神経伝導検査、腰椎穿刺を見学させていただきました。他科病棟フロアに入院している患者の場合は時間に余裕があることが多く、先生より先に一人で向かって問診や所見を取らせてもらいました。腰椎穿刺に関しては、上の先生の指導のもと初めて実施する機会をいただきました。先生方にはやや稀な非侵襲的な手技だったことを意味するchampagne tapだったと教えてもらい、とても褒めてくださり嬉しかったです。

これらの実習内容に加えて、serviceがひと段落ついたら抗てんかん薬の選択、重症筋無力症等に関する軽いレクチャーもしていただきました。症例に関して面白そうな論文や医学雑誌があれば紹介していただき、実習の合間に読んだりして過ごしました。また、先天性の異常を持って生まれた新生児に関して、小児のGeneticsチームが示唆した非常に稀な遺伝子異常に関して報告されている論文があったので、その日家に帰って読んで、次の朝の回診のプレゼンテーションでチームに簡単に報告するなどしていました。

KKI見学

JHUの病院の近隣に関連施設としてKennedy Krieger Instituteという発達障害のある小児から青年のための外来および入院、様々なサービス部門を備えた機関が設置されています。Peds-Neuroと関わりの深い施設であったため、一度見学してみたいとチームに伝えた所、一緒に診療科を回ったJHUの医学生や先生の厚意でKKIの先生複数人に繋いでもらうことができ、少しだけPeds-Neuroの実習を抜けてKKIの外来クリニックを見学させていただく機会も幾度かいただきました。そこでは、自閉症、ADHD、何らかの発達の遅れを疑って受診した患者の初診を見学し、朝の疾患講義にも数回参加しました。ある先生は当初の予定を変更して、私が見学したいと言っていた自閉症に関する講義をアレンジして、KKI内の各施設・部屋を案内してくださり、アメリカで臨床をするならとresidencyのシステムを説明してくださりました。また別の先生は、Prenatal exposure to antibodies from mothers of children with autismをマウスモデルで研究された経験のある方で、精神疾患の病態に関しても少し興味があったので知見を広げることができて嬉しかったです。

終わりに

今回の実習では、日本に比べて学生実習の範囲が広く、学生の自主性が求められていることを強く実感しました。新しい患者さんの診察に一人、または先生と一緒に行った後、What do you think?と訊かれる場面が多くありました。プレゼンテーションの際もそうですが、自発的にアセスメントやプランを考える機会が多く、実際に担当医の立場に立って考える現実的な訓練になりました。診療チームの先生同士の会話などは医学用語だけでなく、症状の様子を表す単語なども速く流れていくので、最初の1-2週間は付いていくのに必死でしたが、段々と慣れていき、診療や話し合いに使用する英語力の成長も得られたような気がします。また、患者さんやその家族と毎日診察でお話を聞き、交流する経験によって、本人やその家族が医療に求めることを直に聞くことができ、医療者として貴重な学びの機会を得たと思います。小児神経は重度の慢性疾患を患う患者さんも多く、的確な医療を提供するだけではなく、本人とその家族の訴えに向き合う姿勢の重要性も実感しました。

チームにいらしたSenior Residentの中には、小児科の教科書であるHarriet LaneのNeurologyパートの執筆者もいらしてチームのレベルの高さを実感しました。また、同じくElective ClerkshipでPeds-Neuroを選択していたJHUの医学部3年生2人と4週間程実習を共にしましたが、JHUSOMに入る前に2年間、社会人として働いていた時の経験について聞くことができた上、これからのキャリア形成について話し合うこともあり、私にとって将来のキャリアを考える上でJHUの医学生と密に交流できたことは非常に参考になりました。

他にも、実習を通して日本との医療制度の違いを感じる機会が度々ありました。ホンジュラスから品質保証されているかも不明な薬を安く購入して常用していたり、抗がん剤があまりにも高価なため服用しておらず、費用は病院持ちで腫瘍摘出の手術は行うけれど、定期的な服用が必要な薬剤は購入できないままだったりと、もちろん日本でも社会的な要因が医療資源へのアクセスを阻む例は多々ありますが、サポートを受けられない状況にある家族を目の当たりにして心を痛めることもありました。

最後になりましたが、今回の実習を支援してくださったGlobal Leadership Awardを授与してくださったFUTI、医学部国際交流室の皆様、奨学金応募にご協力くださったHolmes先生、大坪先生、ボストンにいながら気にかけてくださった花井順一先生、準備にあたって私の相談に丁寧に乗ってくださった先輩、ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。

Johns Hopkins Hospital設立時使用されていた病棟でGrand Rounds発祥の建物とされる“Dome”