FUTI奨学金受給者が Diversity「多様性」の重要性について語る

2022 年 11 月 11 日、FUTI 諮問委員会 (AC) が開催されました。この会では 3 人の元奨学金受給者が現状報告をした後、「多様性」に関して 諮問委員会 メンバーと話し合いました。招待された元受賞者は、1)米国大学の大学院生(博士課程、進化生物学)、2)開業医(東京)、3)東京大学の大学院生(博士課程、国際関係論学)の方々です。(プライバシーを保護するため、このレポートでは匿名にしています。)さらに、奨学金選考委員会会長の松下氏がFUTI奨学生の選考状況を説明しました。 

結論の一つとして、Diversity「多様性」にはいろいろな側面があり, 時と共に解釈がダイナミックに変わることもあり、広い観点からその重要性を認識し、その実現に努めることが重要であると意見が一致しました。話し合いのハイライトは以下の通りです。 

松下FUTI奨学金委員長のコメント 

全体的に見ると、FUTIでは、結果的にはジェンダーに関してはバランスよく選考されている状況にあります。  

東大では女子学生は2割ですが、FUTI奨学生では男女半々。これは、「男性は家族形成を重視することで留学を躊躇するためか?」そして「女性は進路に国際関係を希望する人が多いからか? 」などと推測されています。 

元奨学生からのコメント 

元奨学生I (2015年度FUTI 国際リーダーシップ賞受賞者)

  • 留学時に奨学金をいただくことによって、金銭面で援助を受けた以上に、人のつながりができたことが貴重でした。 コロナで中断していたFUTI Alumniの対面での集まりを現在企画中、来月ごろ再開される予定です。 
  • 東大に限らず、日本から欧米の大学院へ応募する学生を支援するXPLANEを設立、 登録者は2000 人以上で、Podcast や Slack コミュニティ プログラムも行っています。 (https://xplane.jp) 
  • 大学院に関する情報提供のみでなく、Youtubeなどで女性の留学後のキャリア、恋愛、結婚、出産、育児についても発信しています。

元奨学生II (2018年度FUTI 国際リーダーシップ賞受賞者)

  • 東大では、ヨット部で模範的なロールモデルとなる女性がいらっしゃり、自分もリーダーとして活動できました。 
  • 現在東大生は女性が20%ほどですが、東大の合格率に男女差はありません。東大受験をチャレンジする率が女性で低いのは、 ロールモデルの不在が問題だと思います。  女性の優遇(例えば「枠」を作る)よりも、周囲からの応援や、ネガティブなことを言わないことが大事 。チャレンジの芽を摘まないようにしよう。 
  • 「多様性」は男女だけでなく、人種、年齢、身体的特徴など、多様な軸からなります。 異なる点は理解し、同じところを見つけて共感しましょう。  
  • JAXA宇宙飛行士選抜に応募中 です。JAXAも宇宙飛行士を選ぶ際の「多様性」を強調しています。 

元奨学生III (2018年度米国伊藤財団-FUTI 奨学金受賞者)

  • 幼少期をベトナムと中国で過ごし、インターナショナルスクールに通いました。「第三文化の子供」、つまり海外で形成期を過ごしたため、多様性に対する自覚が幼少時に芽生えました 。  
  • 現在社会科学分野の研究をしています。多様性は状況に影響されるため、定義するのが難しい概念であることを実感しています。 「多様性」を実現する最善の方法についての意見も、さまざまな意見に分かれています。  
  • 「多様性」を完全に達成することは不可能です。「多様性」は社会が目指すべき「動く」目標です。  
  • 自分の研究は、多様な地域・国家の研究コミュニティの文脈を架橋することが理想だと思っています。

学生の発表を受けて、以下のような活発な意見交換が行われました。 

  • 「少数派」が「多数派」の価値観を疑問なく受け入れて、そのように振る舞うのが良いとは思いません。様々な変化に対応するには、少数派が作り出す多様性を前向きに評価するような社会が望ましいです。
  • 「多様性」の定義は多様であるべきです。人種、年齢、身体障害など、さまざまな側面を考慮することが必要です。 
  • 本日は、ロールモデルの重要さが、何人から発言されましたが、幼少期からロールモデルがあると良いですね。 
  • 東京大学の男子学生の多くは、リスクを冒すことを嫌うようです。彼らは、海外での挑戦よりも「快適な日本社会」にとどまることを好みます。 日本の男子学生は留学後、社会から「優遇される」日本に帰国する傾向があります。 
  • ダイバーシティだけでなく、「インクルージョン」の考え方を強調し、ダイバーシティが社会の改善に貢献する仕組みを構築する必要があります。 

AC委員と奨学金受給者の間で活発な意見交換が続き、終了時間をオーバーしました。 AC委員会会長の山田教授は 参加者の熱心な議論に感謝し、有意義な対話を継続するために、将来また別の機会にFUTI にとって喫緊の課題についてのセッションを開催したいと閉会の言葉を述べられました。