2013年度FUTI奨学生のレポートから

University of Tokyo Campus TourFUTIニュースレター第7号および 第8号に報告しましたように、8人の東大生が2013年度夏季のFUTIグローバル・リーダーシップ奨学金(FUTI-Global Leadership Award略称FUTI-IGA)を受賞しました。留学先による内訳は、カリフォルニア大学バークレー校(UCB)でのGSP(グローバル・サマー・プログラム)参加者2人、イェール大学でのGSP参加者1人、イェール大学のELI(英語研修講座)参加者2人、同大学サマースクール(YSS)参加者1人。GSP, ELI、YSSへの参加は東大の国際交流課が窓口になりますが、それとは別に東大生が自分で見つけた米国でのサマー・プログラムに応募した学生の中から2人にFUTI奨学金が与えられました。

一方米国大学学生のFUTI-ILA受賞者は合計11人でした。内訳は、東大GSP参加者3名、理学部のインターンシップ・プログラム(UTRIP)参加者6人、MISTI(MIT International Science and Technology Initiative)の紹介で東大の研究室でインターンシップをしたMIT学生2人となります。

2013年度受賞者の名簿とレポートはFUTIウエブサイトのニュース・セクションとFUTIのブログに掲載されます。レポート全文をご覧になるにはここをクリックしてください。

東大受賞者のレポートからのハイライト

アメリカで夏を経験した8人の東大生は異句同音に「非常に有意義な経験ができ、世界観、日本に対する考え方、また、将来の計画に大きく影響があったと」語っています。 小林久志FUTI理事長は「この夏を米国で過ごした東大生の多くが米国の大学院留学やポスト・ドク研究員への道を真剣に考え始めているようです」と感想をのべています。以下にレポートからの抜粋のいくつかを掲載します。

高橋元貴 (農学部、4年)

GenkiTakahashi_160私はカリフォルニア大学バークレー校で、「環境設計(Environmental Design)」という夏季講座に参加し、非常にユニークでプロダクテイブな夏を経験しました。景観設計(landscape design)の分野には興味はあったのですが、勉学一筋で生きてきた僕に芸術分野での経験はなく、進学を考える上で尻込みをしていたのです。バークレーでの景観設計のコースを取ることにより、私が今まで東京大学で四年間培った知識と教養は景観設計の分野で芸術分野での経験のある同級生と渡り合う実力があることが分かりました。この夏の経験は内容面でも精神面でも景観設計家(landscape architect)という職業分野への将来像をより明確で強固なものにし、米国での大学院に挑戦することを決意することが出来ました。この夏の六週間、さまざまな才能、生い立ち、価値観、考え方等を持つ人達に会えた貴重な経験は、東京で夏を過ごしていたら得られない物でした。

近藤那子 (国際関係、4年)

NakoKondo_160私はイェール大学のサマーセッションで歴史と政治学のコースに参加しました。授業に付いて行き、良いパーフォーマンスを出すため日々努力しました。最初は言語的な障壁もあり授業で発言することに苦戦しましたが、しっかりと論点を準備し、とにかく何度も発言を繰り返すことで、最終的にはテンポの速いやりとりでも怖じけることなく議論に貢献できるようになりました。イェールサマーセッションは私の大学生活の中で非常に貴重な体験となりました。授業でも課外活動でも多くを得ましたし、何より、学ぶこと、考えることを心から楽しんだ5週間でした。数年間働いた後、海外の大学院に進学することをより真剣に考えるようになりました。この機会を与えて頂いたFUTIの皆さま、そしてご寄付頂いた皆さまに心より御礼申し上げます。

大藪浩平 (航空宇宙工学専攻、修士2年)

KoheiOyabu_160私は外国人学生の英語力を向上させることを目的としているイェール大学のEnglish Language Institute(ELI) に在籍しました。私の英語はひどいものでした。実はこの夏イェールに行く前は外国人と話したこともありませんでした。

本プログラムを通じて、私は英語や文化の違いを学ぶのみならず、日本の強み・弱みにも気付くことができました。日本人は学校教育を通じて10年以上にわたり英語を学んでいるにもかかわらず、あまりに英語を“使う”機会がなく、極めて実践的な英語力に乏しいということを痛感しました。また、外国人学生、とりわけ中国人学生の勢い・エネルギーには圧倒され、日本人が現状に甘んじていてはあっという間に他国に追い越されてしまうという危機感も感じました。ただ一方で、我々若者が歩みを止めない限り、まだまだ日本が世界をリードしていける可能性があることも同時に感じることができました。イェール大学へ留学した今回の経験は、今後の私の人生に大きな影響を与えるでしょう。

田村 海(国際関係論専攻3年)

KaiTamura_160私はカリフォルニア大学バークレー校のIARU GSP「メディアとグローバルな抗議活動」に参加し、記憶に残る夏を過ごしました。バー クレーでは、一緒に食事をしたり、カフェで勉強をしたり、話し込んだり、プールに行ってリーディングをしたりと、ずっと時間を共にすることで、 (中略)6週間という短い期間で家族のような密な関係を作ることが出来ました。(中略)IARU GSPは単に授業の内容について学ぶ機会であるだけではなく、世界中から集まった学生と異なる視座から議論を交わすとともに、彼らと素晴らしい友人関係を 築く、絶好の機会を提供してくれるプログラムだと思います。

米国大学受賞者のレポートからのハイライト

米国大学の学生達は東大で貴重な技術・経験を身に着けることができ、さらに東大とそのプログラム、そして日本の文化、社会について好印象を受けたと全員が報告しています。以下はレポートからのハイライトです。

ビクトリア・ウィンターズ (MIT、原子力基礎工学、3年)

VictoriaWinters_160高瀬·江尻研究室での経験は忘れ難いものでした。三か月の間に非常に多くのことを物理学および日本語について学ぶことことができました。プラズマ物理学については(この夏以前には)あまり学んでいなかったのですが、研究所の学生や助教授がいろいろと教えてくれたので、この三ヶ月の間に、それまでの二年間の研究で得た以上のことを学びました。 しかし東大で学んだのは単に物理学だけではありません。研究室での新しい友人からは日本語を大いに学ぶことができました。外国語をネイティブスピーカーを相手に練習できたことは大変役に立ちました。また、高瀬·江尻研究室での強い連帯感には感心しました。誰もが一緒に仕事をし、私は自分もグループの一部だと強く感じました。

エルトン・ホー (バージニア大学、物理、3年)

EltonHo_portrait_160私は物理学科の相原教授のBelle II プロジェクトにUTRIPインターンとして六週間にわたり参加しました。科学から何かを得ると同時に貢献できるのは非常に素晴らしいことです。エキサイティングな物理学と技術を目の当たりにし、期待どおりに活気のあるアカデミックな環境を経験しました。この六週間の経験を通して東大で高エネルギー物理学の研究をすることは間違いなく素晴らしいと実感しました。リサーチ以外でも文化的な経験及び新しい友人との絆は私の人生を変えたと言えるでしょう。UTRIP と私の所属した研究室の方々が用意して下さった様々なアクテイビテイにも大変感謝しています。

ヤコブ・シュメルツ(テキサス大学オースティン校、2年生)

JacobSchmelz_160私はアベル1835と呼ばれる銀河の質量分布, 特にこの分布がダークマターをどう解明するかに興味を持っています。牧島一夫東大教授の指導の下での研究は、銀河団内にダークマターが存在するというを結論に達しました。私は今までに、このようなプロジェクトを経験したことがありませんでした。 このプロジェクトから新しいスキルや知識を沢山学ぶことができ、色々な点で成長できました。大学院生の生活とはどのようなものであるかわかるようになりました。東大でこのような素晴らしい経験をしたので、将来は東大大学院に是非応募しようと考えています。

クリスタ・ダミット(プリンストン大学、2年生)

私は多環状エーテルとして知られる海洋毒素に注目している橘和夫化学部教授研究室に加わり、赤潮渦鞭毛藻類(red-tide dinoflagellates)が多環状エーテルをどのように合成するかを解明する研究に参加しました。東京に到着する一ヶ月前には、自分が何を専攻したいのかはっきりしていなかったと認めざるを得ません。インターンシップの6週間は画期的な研究結果を出すには短すぎましたが、これこそ自分が本当にしたいものだと確信を持つのには充分な期間でした。私は化学者になります。東大とFUTIに大変感謝しています。私が情熱を持って打ち込めるものを見つけることができたのは東大とFUTIのお陰です。


OLYMPUS DIGITAL CAMERA東大の奨学生(8人)の名前、留学先は以下の通りです。

カリフォルニア大学バークレー校(UCB) ,イェール大学でのGSPに参加

  • 宮谷聡さん:UCB
  • 田村海さん:UCB
  • 稲田泰明さん:イェール大学

イェール大学の英語研修(ELI)または夏季講習(YSS)に参加

  • 近藤那子さん: YSS
  • 富永順也さん: ELI
  • 大薮浩平さん: ELI

その他の夏季講座に参加

  • 高橋元貴さん: UCB
  • エンクツヴシン・ターボルドさん:UCB

UTRIP_excursions米国大学奨学生(11人)の名前および所属大学は以下の通りです。

東大でのGSPコースに参加

  • Mr. Vibol Heng (イェール大学)
  • Ms. Patty Lan(イェール大学)
  • Ms. Jessica Wong(カリフォルニア大学バークレー校)

UTRIP (University of Tokyo Research Internship Program)に参加

  • Mr. Jacob Schmelz (テキサス大学・オーステイン校)
  • Mr. Mathew Kubicki (イェール大学)
  • Mr. Elton Ho (ヴァージニア大学)
  • Ms. Krysta Dummit (プリンストン大学)
  • Mr. Aniruddha Bapat (カリフォルニア工科大学)
  • Ms. Alana Ogata (ウィリアム&メアリ大学)

MISTI (MIT International Science & Technology Initiatives) に参加

  • Ms. Victoria Winters (MIT)
  • Mr. Chung-an Wu (MIT)

ニューズレター第9号の記事: