元(株)日本ウィンク社長 松下重悳 東京大学赤門の南側に伊藤国際学術研究センターが出来て2012年4月から供用された。国際交流を狙うホール・会議室・教室等から成り、椿山荘のレストラン もある。地上が芝生庭園になっている地下2階に、同時通訳設備の100-500名収容の伊藤謝恩ホールがあり、そこで7月4日夕方「東京大学基金感謝の集 い・総長主催懇談会」が開催された。 この建物はイトーヨーカドーの実質的な創業者伊藤雅俊氏(1924年生、Seven & i Holdings名誉会長)のご夫妻が、東大在学中だったお孫さんの卒業を待って寄付されたという。みすぼらしい物を作ってくれるなとの伊藤氏のご意向で イタリアから取り寄せた大理石や、銅版張りの天井、木製の床など瀟洒な作りとなり、当初の予算を7割もオーバして数十億円(営繕費用を1割含む)の個人寄 付になったそうだ。 当日の会は、前年度に累積寄付額が30万円以上に達した100名ほどが招かれた。まずホールで東京大学基金の活動報告が 担当本部長からなされ、続いて「平清盛がめざした国作り」という表題で史料編纂所本郷教授の講演があった。教授は今年のNHK大河ドラマ「平清盛」の時代 考証をやっておられる方だとか。去年は政治学の名物教授姜 尚中教授の講演だった。 濱田総長以下全副学長・理事、全科長、全研究所長など幹 部三十数名が出席され、立食懇談会が行われた。科長とは例えば「大学院理学系研究科長兼(学部があれば)理学部長」という肩書だ。偶々当日は Melbourneで高エネ物理学会があり、日本時間で5pmにHiggs Bozon粒子発見の世紀の発表があるかも知れぬ日だった。上記理学系科長の相原教授に「発見されたという発表でしたか?」とお尋ねした。教授は携帯画面 を見せてくれて「発見ですよ。この懇談会が無ければMelbourneに私は行っていたところでしたが」と言われた。そのくらい当懇談会が重要視されてい ることに驚いた。 総長は挨拶で、アジアの一流大学に東京大学は数年で追い抜かれると危機感を述べられた。なぜ追い抜かれるのかを念のために 確認したかったのだが、総長は千客万来でその機会を失った。私の想像では(1)投入資金、(2)国際人事交流・学生交流、(3)人々のガッツ、であろうと 思う。私は数人の幹部の方と大学の競争力や学界の動きに関してお話をさせて頂いた。 2011年度には、東京大学基金は21億円の寄付を集めたそうだ。116件の法人寄付が10億円、1万1 千人の個人から11億円とのこと。年々卒業生の寄付者は増えているそうだが、早慶などに比べて東京大学卒業生は愛校心が薄いのか中々伸びないとのボヤキも 聞こえて来る。Oregon州立大では州からの収入が全収入の5%に縮小したと聞いた。私のもう一つの母校Illinois州立大では、 2007-2011で22.5億ドルの寄付を集める目標を立て、24.3億ドル集めた。5年で割って約400億円だから東京大学とは20倍違う額だ。卒業 生ではないが準母校のStanford大ではIllinois大の3倍の規模で寄付を集めている。 米国では会社のCEOと労働者の平均収入 は200倍以上の差があり、日本では16倍だという。格差拡大は困るが、寄付の話なら格差が効いてきて、また税制や文化の違いもあって米国ではよく集ま る。私は幸か不幸か多少Americanizeされているので、お世話になった奨学金や大学には、伊藤雅俊氏とは身分は違うが身の丈に合った還元をしない と申し訳ないと考えている。「余裕が出たら」などと言っていると進まないから、海外に遊びに行ったりする費用と同程度には毎年寄付しようと思ってやっている。
卒 業生が皆成功度合と大学への感謝の度合に応じた寄付をしてくれるといいなあと思う。東京大学基金もそれに応えて特典を用意している。上記「感謝の集い」 や、時折行われる学内の講演会への特別招待があり、日光植物園など附属機関での集いもある。基金とFOTIに累積30万円以上または100万円以上の寄付 者は安田講堂の入口の左右に銘板を掲げてくれる。まとまった金額でなくても、千円以上の月賦・年賦もあり、家に眠る本を寄付する古本募金もある。http://utf.u-tokyo.ac.jp を見ると諸制度の詳細や寄付の仕方が判る。東京大学に恩義のある方は是非一度見て欲しいと思う。
Articles in this newsletter:
- Japanese Alumni Boost FUTI’s Third Annual Campaign
- An Interview with Dr. Chihiro Kanagawa, Chairman of Shintech, Inc.
- Messages of FUTI donors (in Japanese only)
- The roster of FUTI scholarship recipients and their reports are now on FUTI’s website
- Your expression of gratitude to your alma mater in accordance with your financial means by Shigenori Matsushita (in Japanese only)
- FUTI Scholarship Students Enjoying Classes at Yale
- Reception for the 2012 UTRIP participants held
- Reception for the 2011 GSP participants at UTokyo held
- Prof. Koichi Hamada speaks on monetary policy and Japan’s economic recovery
- Mr. Kengo Watanabe, a Pharmacology graduate student, receives an FUTI award
- Mathematician Shoshichi Kobayashi (1932-2012), oldest member of the San Francisco Akamonkai dies at 80