諮問委員会メンバー古井貞熙博士がご逝去

東大友の会の諮問委員会メンバーを務められた古井貞熙博士が、2022年7月31日に逝去されました。古井博士は音声認識研究の先駆者であり、ヒューマン・マシーン・インターフェース・コミュニケーションへの研究に国際的リーダーとして従事されました。享年76歳でした。

古井博士は東京大学工学部で学士(1968年)、その後修士(1970年)、更に工学博士(1978年)を取得されました。1970年にNTT電気通信研究所に入社され、音声分析、音声認識、話者認識、音声合成、音声知覚、と人間・コンピュータのインターフェースの研究に従事されました。1978年から1979年までニュージャージー州、マリーヒルのAT&Tベル研究所で客員研究員を務め、その後NTTでリサーチフェロー、さらにNTT古井特別研究室長を務められました。

1997年には東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻教授を務め、後に学部長を務められました。2011年に名誉教授になられ、2013年にはアメリカへ移られ、豊田工業大学シカゴ校 (Toyota Technological Institute at Chicago)の学長(2013-2019)、そして同理事長(2019-2021)を務められました。

古井博士は1000件以上もの音声認識、人口機能、自然言語処理などを論題とした論文や著書の著者・共同執筆者であり、大川賞、紫綬褒章など多数の賞を受賞され、文化功労者として表彰されました。また、IEEE、ISCA、NHKなど様々な協会や組織からも賞を受賞されました。

東大友の会の諮問委員会メンバー(2020-2022年)として古井博士は日本の大学教育レベル向上の為の努力や次世代にグローバル思考を育成する為の刺激を与えるなど、次世代リーダー育成に深い関心 を示されました。東大友の会や東大卒業生グループ主催のイベントで頻繁にプレゼンテーションを行い、最近では「AI(人工知能)研究の動向と今後の展望」(2020年7月)、そして2021年10月には「AI時代の大学と社会—アメリカでの学長経験から」という講演をされました。

これらの講演では世界のアカデミアと対抗する為に日本の大学が対応せねばならない課題についての見解を古井博士は常に語られ、「今までの日本の教育法では知識を覚えることが中心でしたが、知識は今では簡単に入手できるため、知識をどう使って用いるかの創造力がもっと必要になる」事を強調されました。講演会では古井博士の主張に刺激を受けた、学生、東大友の会理事、大学学長などを含めた多岐にわたる参加者による活発な論議が行われました。

古井光夫人、ご遺族、ご同僚、ご友人、また古井博士の思いやりと優しさにより人生に大きな影響を与えて頂いた全世界で活躍する元学生へ心から哀悼の意を捧げます。

By Masako M Osako, Member of the Board, Friends of UTokyo, Inc.