董 克勇教授の講演と懇親会: 日本と米国の最高裁〜社会へのインパクトの違いはどうしてか?」

7 月 30 日 に、 董 克勇教授を囲む、初の「ファイヤーサイド チャット」が開催されました。このイベントは、東大友の会、さつき会アメリカの主催、FUTI Alumni Associationが後援によるものです。

ハーバード・ロー・スクールの法学講師である董教授は、東京大学法学部の外国人フェロー、世界銀行の法律顧問などの経歴をお持ちです。東大出身の建築士でありコロンビア大学の建築学教授である Geeta Mehta 博士がモデレーターでした。

メータ博士はまず、「1947年の日本国憲法が占領下のアメリカ人によって書かれたのに、なぜ日米の最高裁判所の役割が大きく異なったのか」と、問題提議をしました。董教授は、合衆国憲法の起草背景について、「奴隷制を含む州の権利の保護に関心を持つ反連邦主義者に対して、より強力な国家政府を支持する連邦主義者の間の妥協文書」であると指摘して、 このような背景に基づく『緊張と妥協』は、米国の政治と法学をいまだに分割する米国憲法についての多くの問題点を生み出していると語りました。一方、日本国憲法は基本的に、3 人の若く理想主義的なアメリカ人によって起草されたが、日本政府 (SCAP の管理下にあった) 及び国民 からの真の反対はありませんでした。(占領下の日本国民は起草に招待されていませんでした。) 起草者は主に、1945 年のポツダム宣言に従い、第 9 条のいわゆる「平和規定」と、日本国民に対する広範な市民権を伴う、日本を「非武装化および民主化する」ことに関心を持っていました。

董 克勇教授は、最高裁判所判事の指名と任命の方法にも二国間に大きな違いがあることを指摘しました。米国では、最高裁判所判事はまず米国大統領によって指名され、次に上院の「助言と同意」に従うため、非常に政治的プロセスになります。ただし、米国の最高裁判所判事は、政治的または ”大衆の影響”(popular influence)を受けないようにするために終身任命されます。一方、日本の最高裁判所判事は、最高裁判所と法務省の推薦に基づき、内閣によって任命されます (ただし、最高裁判所判事長は内閣総理大臣によって任命されます)。各判事は、任命後の最初の総選挙と、その後 10 年ごとの総選挙で国民の承認を受ける必要があります。また、日本の最高裁判事は定年が70歳、平均任名年齢は65歳前後で、平均在職期間は約5年です。

参加者からの質問のほとんどは、日本の最高裁判所による判決に関してでした。例えば、日本の最高裁判所の「判例 が違憲として覆す法律が非常に少ない。」という事に関連して、「独立性」に関しての質問がありました。それについて、董 克勇教授は以下のように説明しました。判例 が違憲として覆される法律の事例は、日本では 1950 年から 2010 年の間にわずか 8 件ですが、米国では 900 件以上、ドイツでは 600 件以上、フランスでは判例全体の 3 分の 1 以上です。司法部門と行政部門スタッフのバックグラウンド・経歴の均一性と、両部門の間の緊密さが、判例 が違憲として覆される法律が非常に少い、すなわち法律の正統性が期待されていると指摘しました。

別の質問は、日本で「物議を醸している」裁判判決についてでした。董 克勇教授は、現在、同性婚には非常に異論が多いと述べました。日本国憲法第 24 条には、「婚姻は、両性の相互の同意のみに基づいて成立する」と規定されています。札幌地裁は昨年、憲法14条の性平等規定に基づき同性婚を認める条文と解釈した。一方、今年、大阪地裁は同性婚は憲法14条により否定されていると解釈しました。 両方の地裁は、高等裁判所で上訴しており、最高裁判所に行く可能性が高く、日本の最高裁がこの問題をどのように裁定するかが興味深い。

残念ながら、時間制限があったため、他の多くの興味深い質問を議論するためのに十分な時間がありませんでした。

オンライン形式を使用したので、米国、英国、日本から 35 人以上のメンバーがこのイベントに参加することができました。参加者のバックグラウンドは、大学院生から企業幹部、科学者、法律専門家まで、さまざまでした。セッションは盛大な拍手で終了し、多くの参加者が 近い将来にこの講演の続きを再度教授にお願いしたいと希望を述べていました。