米国東部時間2023年7月28日(日本時間7月29日)に世界銀行にお勤めされている田中幸夫氏(東大OB)による講演・懇親会がオンラインで開催されました。このイベントは、東大友の会とさつき会アメリカの主催で行われました。当日は、米国や日本から様々なバックグラウンドを持つ総勢30名が参加し、大盛況のうちに幕を閉じました。
田中氏は、水グローバルプラクティス上級水資源専門官として世界銀行で御活躍されております。世界銀行にて、2017年より業務で携わった途上国は30か国以上になります。(https://blogs.worldbank.org/team/yukio-tanaka)
今回のご講演では、『世界銀行職員と考える、変わりゆく世界、そして日本』と題し、スライドを用いて、以下の5点を中心にお話をしてくださいました。①世界銀行について、②水問題を通してみた世界、③世界銀行で行ったケーススタディーのご紹介、④日本人が世界に打って出る。
参加者からは、「ご自身のご専門に関する説明はもちろんのこと、国際的なキャリアを築くことについてお話いただき、大変刺激をうけました。」「日本や米国沿岸部では、なかなか身近に感じることのない水資源問題について、素人でも大変分かりやすく説明していただき理解が深まりました。」といった感想を多数いただきました。
ご講演に続いた質疑応答では、日本や海外で活躍する、様々なバックグランドを持つ方が多数参加されたこともあり、内容の深い質問・意見交換が行われました。以下はその一部です。
(参加者)
世界的にみた水不足の地域は?
(田中)
中東は皆さんも容易に想像できると思われるが、意外な地域としては、中国や米国も水不足が懸念される地域である。
(参加者)
自然要因と人的要因それぞれがどのぐらいの割合であるか。
(田中)
はっきりとした割合については定義が難しいが、人口増加は大きな要因である。
(参加者)
灌漑農業に関する田中氏のご意見をお聞かせください。
(田中)
食料不足の深刻な地域であるアフリカは、灌漑農業が盛んではない。灌漑農業は農業生産を大幅に上げるポテンシャルがある。現在灌漑農業が盛んではない地域への仕組みづくりが重要であり、今後の課題だと考えている。
(参加者)
水不足の地域で、淡水化海水の利用など検討はされているのか?
(田中)
スペインなど世界の一部では農業への海水利用は行われている。しかし、海水の淡水化にはエネルギーが必要であり、コストもかかるため、海水の利用には課題も多いと考えている。
(参加者)
日本で教育を受け、また勤務経験を持つ方が、世銀のような国際社会で充実したキャリアを持つにはどのような心構えが必要ですか?
(田中)
日本のような同質集団という快適空間から飛び出し国際機関に勤務するに当たっては、上司から言われたことのみに従うのではなく、積極的に発言し、提案することが大切だ。また、似た物同士でつるむだけでなく、多様性(人種、ジェンダーなど)を味方につけることが重要である。「酒を飲まないと腹を割れない」は、国際社会では通用しないと考える。
最後に、東大副学長でおられる津田敦先生が以下のように、閉会の挨拶をされました。「田中さんが後半お話され、日本人が世界で活躍するための必要な要素、挑戦・変化を促すための仕組みづくりなどは、今後若者にどう伝えていくべきかが課題であると感じた。今年、東大の入学式で祝辞を述べられた馬渕俊介氏と同様に、国際舞台でご活躍の田中氏の益々の活躍を期待している。」
さらに田中氏は「大先輩から元気のいい若手まで、様々な方とバーチャル空間で交流ができ、私自身大変いい刺激をもらいました。普段付き合いのある人とああいう話をしてもどうしても似たような会話になってしまうので、このような場で異なる背景の人と交流できる機会があるのは大変貴重でした。」と述べられました。
また、その後の懇親会では、参加者の多数の方が残り白熱した議論が続けられました。
以上
文責:さつき会アメリカDC/NY イベントチーム
注:イベントで表明された見解は講演者の見解を反映したものであり、世界銀行の見解を反映したものではありません。