東大友の会中長期奨学生懇談会

東大友の会の中長期奨学生を招待したオンライン懇談会が2023年12月9日午後8時(EST)に行われました。懇談会の目的は受賞者同士、また資金を提供してくださった財団の代表者、東京大学や東大友の会のメンバーと留学経験や意見を非公式また友好的に共有することです。 

懇談会には2023-2024年東大友の会中長期奨学生、米国伊藤財団・伊藤謝恩育英財団常務理事 藤岡秀多殿、同財団 山本朝子殿、東大渉外部門シニア・ディレクター 堺 飛鳥殿、東大友の会副理事長・財務担当理事 桑間雄一郎、FUTI Alumni Association会長 羽場優紀、東大友の会諮問委員 古澤えり、そして東大友の会Scholarship委員会メンバー(桜井信子、細田満和子、小出昌平、松下重悳、尾島 巌、大迫政子、武神淳之)が出席しました。(順不同) 

桜井信子Scholarship委員長が初めに挨拶し、出席者に感謝の意を表しました。尾島巌理事長は、会議のフォーマットについて簡単に紹介し、藤岡殿と山本殿に歓迎の意を評しました。長年航空業界で経営に携われてきた藤岡殿は今年9月に伊藤謝恩育英財団と米国伊藤財団常務理事に就任され、学生や研究者との触れ合いを通して充実感のある数カ月を過ごしていると語られました。財団の活動について簡単に説明され、来年の設立30周年を前に、サステイナブルな支援を学生や研究者に提供してきた創設者故伊藤雅俊氏のレガシーを今後も続けていくと強調されました。 

続いて奨学生がプレゼンテーションを行い、その後の質疑応答では活発に意見が交わされました。奨学生の一人一人が、アメリカ留学での苦労や受けた刺激など、充実感に溢れた留学経験について語り合いました。以下にその一部を紹介します。 

現在プリンストン大学に留学中の東大大学院生: 

プリンストン大学での留学のお陰で、物理学で著名な研究者と研究を行ったり、他大学を訪問したり、アメリカでの人脈を築いたりする機会を多く得られました。1月には日本に帰国しますが、アメリカとの共同研究は続けるつもりです。来年9月に博士号を取得した後は、アメリカでポスドクのポジションを得たいと考えています。 

現在コロンビア大学で国際公共政策を学んでいる東大大学院生: 

現在、私はジェンダーと公共政策との「交差」(インターセクション)について取り組んでいます。私の研究は、「ジェンダー」が生活のあらゆる領域でどのように統合され、あるいは不可視化されているのか、そしてどのように可視化できるかについてです。ジェンダー問題と公共政策の両方に特化したプログラムを提供する大学は世界でも少なく、コロンビア大学のSIPAはその数少ない大学のひとつです。私は「ジェンダー主流化とグローバル問題」、「リプロダクティブ・ヘルス政策」についてのコースを履修しており、世界各国のさまざまなリプロダクティブ政策とその意図について比較研究を行っています。 

現在ハーバード大学で経済を学んでいる東大大学院生: 

私がアメリカ留学を決意したのは、日本で研究をしていたときに対面した二つのチャレンジが原因と言えます。その一つは、官僚的な壁(オブスタクル)による日本でのデータ不足でした。データが限られているため、小規模で「非管理的な」(Non-administrative)データやシミュレーションに基づくデータに頼らざるを得ず、その結果、限られたデータにバイアスが生じたり、実際の状況を反映しない結果が生じたりするのです。もう一つの問題は、私が研究しているノンパラメトリック法についての日本で数少ない研究者の一人である東大での指導教官が定年退職されることでした。ハーバード大学ではデータは十分にあり、入手能力、そして専門知識を持った人材も存在するので、このようなチャレンジを乗り越えることができています。 

最後に、FUTI Alumni Associationの会長とFUTI奨学生でもあった羽場優紀氏が奨学生の興味深いプレゼンテーションに感謝を述べると共に、翌日の忘年会で奨学生と直接会えることを楽しみにしていると述べました。奨学生とのつながりだけではなく、理事と諮問委員会のメンバーとのつながり・交流が東大友の会の奨学生にとり重要な経験の一部になっていると語りました。 

*東大友の会受賞者のレポートはFUTI 奨学金受賞者名簿のページから読むことができます。