エルネスト・ギュンター賞受賞者、尾島巌教授、次世代タキサンとその腫瘍特異的投与法に基づく効果的な癌化学療法の探求について講演

2019年3月15日にはニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のUniversity Distinguished Professor、また東大友の会諮問委員であられる尾島巌教授を迎え「次世代タキサンとその腫瘍特異的投与法に基づく効果的な癌化学療法の探求」という題名でマンハッタンに位置する東京大学ニューヨークオフィスで講演会を開催しました。講演はさつき会アメリカ主催、東大友の会共催で行われました。卒業生、大学院生、研究員や薬剤専門家を含む20名を超える参加者がありました。

尾島教授は日本の相模中央化学研究所で国際的評価を確立された後、1983年に招聘されて活動拠点をニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の化学部に移されました。1995年にUniversity Distinguished Professorに昇格、1997年から2003年まで化学部長 、そして2003年以降はInstitute of Chemical Biology and Drug Discovery (ICB&DD)を創設し所長を兼任していらっしゃいます。サバティカルの期間には、Université Claude Bernard Lyon(1989年)、東京大学(1996年)、The Scripps Research Institute(1997年)、Université de Paris XI(1997年)で研究されました。

尾島教授は東京大学から1968年に学士号、1970年に修士号、そして1973年に博士号を全て化学で取得されました。

尾島教授の研究は非常に幅広く、化学、生物学、医学と多くの学問領域にわたり、数多くの論文を発表された他、様々な名誉ある賞を受賞されています。

詳細はこちら: https://www.stonybrook.edu/commcms/chemistry/faculty/_faculty-profiles/ojima-iwao

東大友の会理事長の山田雅章教授からの開会の挨拶の後、尾島教授は米国化学会2019年エルネスト・ギュンター賞受賞の対象となった、強い制癌作用を有するタキサン系天然物の化学合成、医薬化学、化学生物、作用機構、腫瘍特異的投与法の開発等、多岐にわたる研究について講演されました。以下は講演の要旨です。

パクリタキセル(タキソール®) およびドセタキセルは、様々な種類の癌に対して最も広く使用されている化学療法薬の一つです。しかし、これらの薬剤は、望ましくない副作用だけでなく、薬剤耐性を引き起こします。したがって、特に多薬剤耐性および転移性癌に対して、より良い薬理学的特性および改善された活性を有する次世代タキサン抗がん剤を開発することが不可欠です。私たちの研究は、多数の高活性な第2および第3世代のタキサン制癌剤の発見につながりました。第3世代タキサンは、癌細胞の多剤薬耐性を実質的に克服しました。さらに、癌の再発や転移の原因となっている癌幹細胞に対しても、次世代タキサン制癌剤は優れた効能を発揮します。この講演では、私の研究室での25年を超える、高活性を持つ次世代タキサン制癌剤の発見と開発、およびその腫瘍特異的投与法に基づく効果的な癌化学療法の探求について簡潔にお話したいと思います。

講演およびQ&Aセッション中、参加者、特に若手研究員から多数の質問が出て、意見の交換でたいへん盛り上がりました。講演の締めくくりに尾島教授は次のように述べられました。

「これらの研究は非常に挑戦的ですが、刺激に満ちています。本日は効果的な次世代癌化学療法の探求についていくつかの有用なメッセージを皆様に伝えられたことを期待しています。また、創薬・開発研究には多学際領域研究と新しい形の産学連携が重要であることを強調したいと思います。」 講演会は、盛大な拍手で閉会となりました。

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