Fall semester at Princeton University

by Shun Hokazono

東京大学教養学部国際関係論コース3年の外園駿(ほかぞのしゅん)と申します。私は2023年9月からのFall Semesterに東京大学の全学交換留学のプログラムにてPrinceton Universityに留学しており、2024年1月からのSpring SemesterにはUC派遣プログラムにてUniversity of California, Berkeleyに留学予定です。Ito Foundation U.S.A.様、Friends of UTokyo, Inc.様にご支援頂いているのは名目上はUC Berkeleyのプログラムの分ですが、合わせて1年間の留学となるため、本レポートではPrinceton Universityでの最初の2ヶ月についてご報告します。

↑Princeton University構内の様子

Academic面について

 私は不必要な戦争の回避及びより協調的な国際関係の実現に貢献したいという思いから国際政治学を専攻しており、国際秩序論・紛争論・安全保障論などを中心に学んでおります。プリンストン大学は第二次世界大戦以降のアメリカにおける国際政治学の発展を支えた理論家を数多く輩出したほか、School of Public and International Affairs(以前はWoodrow Wilson School of Public and International Affairsとの呼称でしたが、BLM運動の広がりの中でプリンストン大学は2020年に人種差別主義者であったウィルソンの名前を削除する決定をしました)をはじめとする全米屈指の国際政治学の研究・教育機関があるため、留学を決意しました。

政治学部に所属し、Causes of War、Violent Politics、American Foreign Policy、International Political Economyの4つの授業を取っています。Violent Politicsは少人数であるためディスカッションを中心としたセミナー形式で進行し、その他の授業は週2回の講義と、少人数のグループに分かれた週1回のデイスカッションセッションからなっています。Causes of Warの授業では、ThucydidesのHistory of the Peloponnesian WarやKenneth WaltzのMan, the State and Warといった古典中の古典とされる文献から始まり、歴史的事例もふんだんに参照しつつ様々な観点からクラシカルなアプローチで戦争原因を考察する一方、Violent Politicsでは「なぜ政治が暴力的なものになるのか」について、アメリカの最先端のpolitical scienceのアプローチを駆使して考察しています。古典的/先端的な異なるアプローチを取るこの二つの授業を取り、大量の文献を読みこなして講義・議論に参加することで、国際政治学における安全保障論の全体図が頭の中に描けてきている感覚があり、帰国後の国際関係論コースでの卒論や、その後の将来の実務・研究を見据えても大変有意義に感じています。American Foreign Policyの授業はアメリカ固有の外交政策の捉え方を理解するのに役立っており、International Political Economyはこれまであまり馴染みのなかった分野であるだけに、政治について考える際の視野を拡げてくれています。

日本での学びと最も大きな差を感じる部分としては、やはり圧倒的なリーディングの量が挙げられます。各教科毎週100-200ページのリーディングが前提として課せられ、それが4教科ですから、あまりにも大変です。特に初めのうちは当然全部こなすことは不可能なわけですが、授業中に議論をしている限りプリンストンの学生はしっかりと全て内容を理解しているように思えます。どうやら鍵は「Strategicに」読むことにあるようで、あらゆる教授・Ph.D.生のTAがこの重要性を強調します。即ち、正面からこれだけの量のリーディングを全部読むことは到底不可能なので、スキミングをして、まずmain argumentをざっくり掴み、そこから重要なところを掘り下げていく、という読み方ですが、ノンネイティヴとしてこれをやっていくのは相当に難しいです。それでも慣れてきてはいるのですが、リーディングに限らず、帰国生ではなくノンネイティヴである私にとって、こちらの学生でも苦労する勉強についていくのは相当大変です。リーディングを読むスピードが遅く、満足にこなせずに授業に行って理解の質が落ちることもしばしばですし、授業中の議論で一回も発言できずに悔しい思いをしたこともあります。ですが、悔しい思いをする分大きな成長の機会になっているのは間違いなく、言語によるバリアを感じずに深い議論ができるという理想を見据えて食らいついて行きたいと思っています。

そのほかには、プリンストン大学への留学を希望した理由でもあった、ずっと直接習いたいと思っていた国際秩序論の大家のアイケンベリー教授が現在サバディカルでOxfordにいらっしゃるという話を聞いた際にはショックだったのですが、メールでコンタクトが取れ、近々zoomで研究の相談をさせていただくアポを取ることができました。

↑図書館で勉強する学生の様子

Social面について

 学業面だけでなく、アメリカの大学生活そのものを経験して多くの学生と知り合い、アメリカの文化を肌で感じることも重要だと思い、Socialの面にもできる限り力を注ぎたいと思っています。こちらでできた友人に誘われた縁もあり、プリンストンに来てから和太鼓を始め、週2回練習しています。また、Alexander Hamilton Societyという外交政策系のコミュニティーに参加し、セミナーなどのイベントに顔を出しています。そのほか、Japanese Students Associationに入って現地の日本人学生と親しくなったり、日本語を勉強している現地の学生とディナーで交流する日本語テーブルに参加したりしています。加えて、海外の視点から日本を見つめ直したいという思いもあり、Global Japan Labという日本研究のコミュニティーに学部生ながら参加させていただいています。他大学から教授を呼んだ議論会なども行っており、Stanford Universityの筒井清輝教授やHarvard UniversityのChristina Davis教授といった高名な教授たちに直接質問をぶつけることができました。

 友人関係としては、プリンストンは留学生の数が少ないため計19人しかいない世界各国からの交換留学生たちとまずは仲良くなり、その後授業やクラブ活動、友人からの紹介、食堂での出会いなどを通して少しずつ友人の輪を広げています。プリンストンに来てすぐのウェルカムパーティーやハロウィンパーティーなどアメリカの大学独特の雰囲気も味わいつつ楽しく過ごしていますが、どうしても英語力のバリアを感じて日本にいる時に比べ消極的になっている自分を自覚するため、どんどん自分から積極的に話しかけたり動いたりしていかなければと自戒しているところです。

↑ハロウィンパーティーにて

休日の過ごし方

上記の通り課題の量がとてつもなく多いため、休日も図書館で勉強していることが多いですが、一方でニューヨークに電車で1時間半で簡単にアクセスできるため、週末に遊びに行って見聞を深めたり、友人と会ったりすることもよくあります。秋休みは1週間強と長かったため、前半はカナダのトロントに行って観光をしたり友人と会ったりしたのち、後半はボストンに行ってハーバード大学公共政策大学院やタフツ大学法律外交大学院を見て回りつつ、現地に留学されている外務省・経産省の官僚の方々や、研究者の方々とお会いしてお話を伺う機会に恵まれました。

おわりに

Princeton Universityというあまりにも恵まれた環境で日々を送り、学べていることの貴重さと有り難みを噛み締め、残り2ヶ月の滞在を最大限の成長の機会にできるよう、全力で努力したいと思います。このような留学が可能になっているのも、ご支援頂いているIto Foundation U.S.A.様、Friends of UTokyo, Inc.様のお蔭です。最後になりましたが、心より感謝申し上げます。